今回ご依頼頂いたのは先日亡くなってしまった当方の友人の奥様から持ち主が生前使用していた財布をリフォームかリメイクして身につけられる『形見』にしたいとのお直し案件でした。

財布(マネークリップ)とちょっとした革のアクセサリーになるものということでキーホルダーをご要望だったのですが、全体的にかなり深刻なダメージがあったので使用できる部分を丁寧に切除して一度繋ぎ合わせてある程度の面積を確保して使う必要がありました。

コバステッチ、ヘリ返し、パイピング、断ち切り、かがり、、、e.t.c…

どの方法で作れば一番折れ曲がりにストレスが無く、擦れる凸面が無く、より長く使えて持ち歩く物になるかを考えた結果、つなぎ合わせる部分をツライチで合うように縫って縫い代が重ならなければ擦れることもなく、コバに凹凸が出来て処理し辛くなることもないということで久々に独自開発したミシンステッチのテクニックを使うことにしました。

蘇生前の状態

ロックンロールな人でしたのでダメージも本当にロックですね(汗)

解体中

少しでも力を入れるとボロボロ千切れてしまいそうだったので丁寧に慎重にステッチの除去とパーツ毎の分離をしました。

パイソンウォレットの解体新書

ご依頼を受けてから一つ一つどんな物を作るかを考えるので、その人のライフスタイルや雰囲気、趣味嗜好、渡した後にどんな使い方をするか等々、「一つの物」と「一人の人」について案外長い時間思いを馳せます。

幼少期より物が規則的に整列している風景フェチなので解体後は必ず整列させます(笑)

こうやって見ることによって全体を俯瞰して見ながらこれから作る物のイメージを膨らませるという意味もあって自分にとっては重要なルーティンになっています。

独自開発のフラットステッチ①
独自開発のフラットステッチ②

このステッチテクニックを使うことで表革と裏革の切り替え線が重なっても二枚重ねと同じ厚みになります。

再構築マネークリップ
再構築キーホルダー

スナップボタンが壊れて無くなっていたパーツのコバ再仕上げとステッチ補修、アイレットを交換してナスカンを装着。

得意のドイツホックが光るいい感じのキーホルダーになりました!

蘇生完了!!

革は大なり小なり「死」に触れている側面があるので革以外の素材を扱う時とは根本的に違う気持ちでの作業になるのですが、
たまに頂く形見を作る案件で間接的にでも「人の死」に触れる時、いつもより強く自分の「生」を感じ、深く静かな気持ちの中無心で作業をしているような清い時間を過ごせたりします。


別次元で”memento Mori”の意味を解釈するような、「生業」や「職業」に「業(カルマ)」の文字が入っている事に強い因果を感じたり、死を思いながら生に向き合うような感覚は貴重な体験です。


情報化が進み、シンプルライフが主流になりつつありますが、「物」には物質世界で生きているたった一度のこの一生の内しか触れられないので沢山持つ事が幸せとは限りませんが沢山の物に触れる機会を持てることは幸せなことだと思います。
全ての物は誰かが生きている時間の中で作った「生の一部」であり、それを誰が作ったのかまで分かるとより物を大切にする世の中になるのかなと思います。

財布やバッグ、アクセサリー、服、時計、靴、家具等、形見の品のリメイクやリフォームがございましたら是非お問い合わせ頂ければ幸いです。

ありがとうございました。

「パイソンウォレット再構築」

・ヒアリング

・デザイン

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・料金¥40,000~(+TAX)

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