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オーダー内容
今回のオーダーは親しい方が妹さんの誕生日プレゼントに革で3万円以内の何かを作って欲しいとのことでした。
大体の場合はカードケース、財布、バッグ等何のアイテムにするかということがお客様の中で決まっているのですが、今回は何のアイテムにするかという段階からのお任せ案件でしたのでよりこの作品を使う人の雰囲気を多く細かく知る必要がありました。
yesnosは基本的にお客様のライフスタイルやファッションを出来るだけ細かくヒアリングして一点一点そのお客様だけの物を作る活動に心血を注いでいるので、今回もお客様とコラボレーションをする気持ちで製作に当たりました。
オーダーまでのいきさつ
お客様の人物像とキーワードは、、、
・20代前半女性
・ストリートファッション
・カラフル
・クロカン4WD
・レザーの物への関りは深くない
ヒアリングしていく中で大体このような要素が出てきたので、自分の中では上にあるグラフィティーペイントの壁の前にいる、カジュアルでカラフルでストリートファッションの女性が身に着けていても違和感の無い物を作ろうとイメージを膨らませていきました。
デザインについて
ぼんやりとアイテムの形状を丸なのか四角なのか三角なのか、大きいのか小さいのかを考えている時にプレイリストから僕にとってとても懐かしく、大好きだったアメリカのバンド「The Music」の曲が流れてきて、このCDジャケットの柄が頭の中に浮かんだのをきっかけに製作するアイテムは「丸い物」にしようと決めました。
この丸さ、カラフルさ、ポップさを革で表現出来て、尚且つ「軽く」なり過ぎない、「革の神髄」がそこにちゃんとある物を作ろうと思っていたので、このCDジャケットが頭に浮かんだ瞬間に度々お世話になっているスキモレザーの職人さんが作る素材を使用することにしました。
後日直接工房にお邪魔して一枚一枚イメージに近い素材は無いか宝探しのような作業の末、、、ありました!
イメージもサイズもぴったりのものが、、、!
使用した革について
スキモレザーについて
スキモレザーとは、15歳から80歳の現在も現役で靴の月形職人をされている大久保さんという職人さんが長年の経験と研究の末に編み出した独自の技法で、東京都の賞を受賞された特許技術でもあります。
何色も別々に染色したベジタブルタンニン鞣しの革を何十枚も積み重ねて接着後に変形させて水平なり垂直に切断した断面に現れる模様を利用した革の加工技術であり、様々な模様を作る事が出来、日夜研究を続けられています。
革加工の職人だった父の跡を継いで、革職人になったという大久保さん。
当時の主な仕事は、革靴のかかとの内側に貼る革加工でした。
スキモレザーについて、大久保さんは「とても腕のいい職人だった父でも、亡くなった後に話題にする人はほとんどいなくなったことから、『どんなに腕のいい職人でも、皆の目にふれるものを作っていないと忘れられてしまう』と思い、『職人として自分にしかできないものを生み出したい』と強く考えるようになったことが始まりだと話します。
開発のきっかけは、革をたくさん重ね合わせて、それを彫刻刀で彫った作品を見たこと。
革がかなり多く使用されていましたが、革加工の職人である大久保さんは「もっと少ない枚数で実現できそうだ」と思い、作りはじめました。
そのうちに、さまざまな色の革を組み合わせることで、模様のあるレザーを作ることができると思いついたとのことです。
スキモレザー作りは、表現したい模様を考え、まず革を染めるところから始まります。
染める色合いにもこだわっているため、染め作業もすべて一人で行っています。
革が染め上がったら、どのように革を重ねて、どのように革を漉けばいいのか考えながら、何度も試行錯誤します。
「満足できる模様を生み出すために幾度も作業を重ねるので、満足のいく模様が出せたときはとてもうれしい」と大久保さんは言います。
このように、スキモレザーは工程が複雑で狙った柄をうまく出すことが非常に難しいため、オーダー注文は受けておらず、既に完成している模様の中から選んでいただいているとのことです。
「スキモレザーを仕入れた職人さんが、自由な発想で作り上げた作品を見るのも、楽しみのひとつです。」と大久保さんは言います。
ベジタンについて
ベジタブルタンニンなめし(植物タンニンなめし)は、天然植物(草や木の汁など)から抽出したタンニン(渋)を使って皮をなめして革にする方法で、皮に防腐処理を施して日用品に使用出来る革本来の質感を前面に出した自然な風合いの革素材にする方法です。ベジタブルタンニンなめしは、水質や土壌、家畜が食べた物の違いからもキャラクターに違いが出る、古来から受け継がれている繊細で丁寧ななめし方です。
「ベジタブルタンニンなめし」の革の良さ
・使い込むほど艶(つや)や風合いが出て馴染んでくる
・型崩れしにくく丈夫
・染料の吸収がよく、発色がいい
「ベジタブルタンニンなめし」の革が高価な理由
ベジタブルタンニンなめしの革は、植物タンニンが一気に革の内部まで浸透しないためタンニンの濃度を段階的に少しずつ上げながらなめすために、作業工程数が多くなり、30以上の工程を踏まえる必要があります。そのため手間暇が非常にかかり、化学薬品を使って一気になめすクロムなめしに比べて2~5倍高価になります。
※参考
・ベジタブルタンニン鞣し
植物性のタンニンを使用する鞣し方。
硬くて丈夫。さらに型崩れしにくいのが特徴。
日光や油分などに影響しやすいため、定期的なメンテナンスをしてあげる必要がある。
ただ、エイジングにより変化していく特徴がある。
・クロムタンニン鞣し
クロムという化学薬品を使う鞣し方。
短時間で製造できるのが魅力。
ベジタブルタンニン鞣しの革と比べ、エイジングが少ないが、
防水、耐熱などに優れており、メンテナンスをしなくても耐久性がある。
何といってもエイジング(経年変化)
栃木レザーは、その名の通り、栃木県に会社があり、1937年から続く、
老舗の皮革製造メーカーです。
栃木レザーについて
牛ヌメ革 (ベジタブルタンニン鞣し革)を専門に製造しており、
日本一の品質を誇ります。
しなやかで丈夫(堅牢)であり、さらに年月が経つにつれて、
味わい深く変化していくところは、日本のみならず世界中で評価されています。
栃木レザーの魅力
長く使える。高品質
栃木レザーは、「原皮」から、「革」になるまで、20以上もの工程があります。
手間と時間をかけ、伝統の独自の鞣し方法で、丈夫な革を生み出しています。
毎日使っても飽きが来ません。 もっともっと使っていきたいと感じれると思います。
お財布やバッグに限らず、せっかく出会えた革製品ですから、
長く使いたいものです。
でも、やはり同じ状態だと飽きてしまったりしますよね。
革製品の最大の魅力は、エイジングと言いますが、
栃木レザーは期待以上の変化をしてくれるので、
エイジングを日々楽しんでいき、初めて手にしたときよりも
より深みも増し、色味も変化していくので飽きることなく
長く愛用できるものだと感じます。
拘った技法
YES/NO刻印について
YESとNOのレザーのロゴピースはベジタンの厚口ヌメを使用しており、
コバ仕上げ→マスキング→打刻→刻印部マスキング除去→塗料流し込み→全マスキング除去→革表面仕上げ、、
という意外と手間のかかる方法で一つ一つ作っています。
理由としましてはスタンプ式の箔押しは早くて簡単なのですが刻印の深さや重厚感が無いので敢えてこの方法をとっています。
出来上がり
納品時、早速財布の中身と鍵類を全部入れて使用して下さりましたので、
最初は小銭入れをイメージして作成しましたがお客様によって入れるものが違ってもいいなと感じ、「ベルトホルダー」とさせて頂きました。
オーダーによって中にカードポケットを追加したりキーホルダー用の金具を取り付けたりすることも可能です!
ありがとうございました!
漉模革&フルベジタブルタンニン鞣し牛ショルダー/ベルトホルダー
・ヒアリング
・デザイン
・作成
・料金目安¥25,000~(+TAX)