オーダー内容

オーダーまでのいきさつ

yesnosのインスタグラムで漉模革(すきもかわ)と木目金のiphoneケースをご覧になり、この雰囲気のベルトが欲しいとのオーダーを頂きました。

ベルトは極めて単純な構造と少ないパーツ数で構成されていて、デザインが出来る面積が細く少ないアイテムなのですが、漉模革と木目金という2つの「主役級」素材をバランスよく共存させるデザインを考えるのに時間を要しました。

お客様の人物像とキーワードは、、、

・科学者

・文化への知的欲求

・オリジナリティーと遊び心を大切にしつつ、オフィスでの着用に違和感の無い物

・ピアニストのグレングールド氏が着けていそうな物

・「粋」

デザインについて

ピアニストのグレングールド氏

細身で長身のお客様でドレスシューズやスーツにも造詣の深い方でしたので、

シンプルさとオリジナリティーと”面白さ”のある物をお作りしたいなと思っておりました。

ご要望の中にピアニストのグレングールド氏が着けていても違和感が無い感じというものがあったので、グレングールド氏をリサーチしたり演奏している姿を見たりしてイメージを膨らませていきました。

ここでの紹介は控えさせて頂きますが、グレングールド氏、、、とても面白い方でした!

ドキュメンタリー映画もあるので是非!!

デザイン案として幾つも提案を重ねていく中で採用して頂けたのが「ベルトにもなりギターストラップにもなる」という機能でしたのでベルト先にある普通のベルトにはない切り込みと、ギターストラップには長さが足りないので別パーツの短いベルトとを連結させてギターストラップにする仕様にしました。

使用した革について

スキモレザーについて

スキモレザーとは、15歳から80歳の現在も現役で靴の月形職人をされている大久保さんという職人さんが長年の経験と研究の末に編み出した独自の技法で、東京都の賞を受賞された特許技術でもあります。

何色も別々に染色したベジタブルタンニン鞣しの革を何十枚も積み重ねて接着後に変形させて水平なり垂直に切断した断面に現れる模様を利用した革の加工技術であり、様々な模様を作る事が出来、日夜研究を続けられています。

革加工の職人だった父の跡を継いで、革職人になったという大久保さん。
当時の主な仕事は、革靴のかかとの内側に貼る革加工でした。
スキモレザーについて、大久保さんは「とても腕のいい職人だった父でも、亡くなった後に話題にする人はほとんどいなくなったことから、『どんなに腕のいい職人でも、皆の目にふれるものを作っていないと忘れられてしまう』と思い、『職人として自分にしかできないものを生み出したい』と強く考えるようになったことが始まりだと話します。
開発のきっかけは、革をたくさん重ね合わせて、それを彫刻刀で彫った作品を見たこと。
革がかなり多く使用されていましたが、革加工の職人である大久保さんは「もっと少ない枚数で実現できそうだ」と思い、作りはじめました。
そのうちに、さまざまな色の革を組み合わせることで、模様のあるレザーを作ることができると思いついたとのことです。

スキモレザー作りは、表現したい模様を考え、まず革を染めるところから始まります。
染める色合いにもこだわっているため、染め作業もすべて一人で行っています。
革が染め上がったら、どのように革を重ねて、どのように革を漉けばいいのか考えながら、何度も試行錯誤します。
「満足できる模様を生み出すために幾度も作業を重ねるので、満足のいく模様が出せたときはとてもうれしい」と大久保さんは言います。

このように、スキモレザーは工程が複雑で狙った柄をうまく出すことが非常に難しいため、オーダー注文は受けておらず、既に完成している模様の中から選んでいただいているとのことです。
「スキモレザーを仕入れた職人さんが、自由な発想で作り上げた作品を見るのも、楽しみのひとつです。」と大久保さんは言います。

ベジタンについて

ベジタブルタンニンなめし(植物タンニンなめし)は、天然植物(草や木の汁など)から抽出したタンニン(渋)を使って皮をなめして革にする方法で、皮に防腐処理を施して日用品に使用出来る革本来の質感を前面に出した自然な風合いの革素材にする方法です。ベジタブルタンニンなめしは、水質や土壌、家畜が食べた物の違いからもキャラクターに違いが出る、古来から受け継がれている繊細で丁寧ななめし方です。

「ベジタブルタンニンなめし」の革の良さ

・使い込むほど艶(つや)や風合いが出て馴染んでくる
・型崩れしにくく丈夫
・染料の吸収がよく、発色がいい

「ベジタブルタンニンなめし」の革が高価な理由

ベジタブルタンニンなめしの革は、植物タンニンが一気に革の内部まで浸透しないためタンニンの濃度を段階的に少しずつ上げながらなめすために、作業工程数が多くなり、30以上の工程を踏まえる必要があります。そのため手間暇が非常にかかり、化学薬品を使って一気になめすクロムなめしに比べて2~5倍高価になります。

段階的に濃度の違うベジタブルタンニンの浴槽             


※参考
・ベジタブルタンニン鞣し
植物性のタンニンを使用する鞣し方。
硬くて丈夫。さらに型崩れしにくいのが特徴。
日光や油分などに影響しやすいため、定期的なメンテナンスをしてあげる必要がある。
ただ、エイジングにより変化していく特徴がある。

・クロムタンニン鞣し
クロムという化学薬品を使う鞣し方。
短時間で製造できるのが魅力。
ベジタブルタンニン鞣しの革と比べ、エイジングが少ないが、
防水、耐熱などに優れており、メンテナンスをしなくても耐久性がある。
何といってもエイジング(経年変化)

栃木レザーは、その名の通り、栃木県に会社があり、1937年から続く、
老舗の皮革製造メーカーです。

栃木レザーについて

牛ヌメ革 (ベジタブルタンニン鞣し革)を専門に製造しており、
日本一の品質を誇ります。

しなやかで丈夫(堅牢)であり、さらに年月が経つにつれて、
味わい深く変化していくところは、日本のみならず世界中で評価されています。

栃木レザーの魅力
長く使える。高品質

栃木レザーは、「原皮」から、「革」になるまで、20以上もの工程があります。
手間と時間をかけ、伝統の独自の鞣し方法で、丈夫な革を生み出しています。

毎日使っても飽きが来ません。 もっともっと使っていきたいと感じれると思います。

お財布やバッグに限らず、せっかく出会えた革製品ですから、
長く使いたいものです。
でも、やはり同じ状態だと飽きてしまったりしますよね。

革製品の最大の魅力は、エイジングと言いますが、
栃木レザーは期待以上の変化をしてくれるので、
エイジングを日々楽しんでいき、初めて手にしたときよりも
より深みも増し、色味も変化していくので飽きることなく
長く愛用できるものだと感じます。

出典:https://dete-diary.com

木目金について(サル革部)

漉模革(すきもかわ)と木目金(もくめがね)を一つのアイテムの中でバランス良く使用する為に今回は木目金のパーツをサル革に取り付けました。

サル革もレザーの輪に漉模革の小さなプレートを取り付けた上に木目金パーツを取り付けてあります。

「木目金(もくめがね)」とは、比重、融点、硬度の異なる金属を複数枚重ね合わせて熱で溶着した後削り出した時に浮かび上がる木目のような模様を持つ金属加工技術であり、400年前に太平の世となった江戸時代に発達し、廃刀令による刀の運命と共に失われてしまいはしたものの、現代の職人やアーティストの研究により再現されている大変美しい模様を持った日本発祥の金属工芸の一つです。

異なった性質を持つ多種多様な金属を合わせて模様を作る為、それぞれの金属に対しての多角的な知識と実際に扱う技術、出来上がりを想像しながら模様を削り出していく卓越した熟練度を要する大変デリケートな工程を踏んで完成する大変優雅な表情を持つレアメタルです。

金、銀、プラチナ、銅をベースにするのが主ですが、現代ではチタンやタンタル、ジルコニウム等を用いた木目金を作る技術も発達しており、正に温故知新を感じさせる技術です。

木目金の刀のツバ

簡単にではございますが真横で見た限りでわかる範囲の工程の説明も載せておきます。

銀と銅は相性がよく四分一(しぶいち)とは日本の伝統的な銀銅合金です。
銀の融点は1084度で銅は961度ですが銀と銅が接している時、接合面の融点は750度まで下がるのでこの「共晶点」という現象を利用して銀と銅の接合部だけを溶着させて合金化を防ぐ火加減がポイントになります。
火の温度が低いと溶着が不足して剥離しやすくなり、高いと合金になって木目が出ない。更にこのパーツは全方向から剥離する力のかかる球面のデザインなのでより確実に金属同士が溶着されていることが必須となる難易度の高い技術です。

色の違いが出るように異なる金属を交互に重ねて固定し加熱。共晶点で金属同士が溶着したら叩いてブロック状の金属ミルフィーユを薄い板状にします。
その板を彫ったり削ったりしながらその高低差が無くなるまで叩きながら延ばして加工硬化作用(金属が叩くことによってどんどん締まって固くなる現象)を避けるために絶妙な温度での焼き入れを繰り返すと金属で出来た木目の板が出来上がります。

ここまでの作業でやっと材料の完成で、ここからこのデリケートな素材を使用した金具づくりがスタートします。。。

木目金のボタン

今回はドットボタンに仕上げて頂いたのでカシメる脚を球面に加工した木目金板で巻き込んで溶接し、酸化、硫化、イオン化をを防ぐ為にセラミックを焼き付けて表面を保護しました。

拘った技法

バックルを金具ではなくレザーで創作

今回の一番の見どころである「レザーバックル」は文字通りバックル本体をレザーで作成したものになります。

裏側に来る部分と表側に来る部分を別で作ってドッキングさせた構造になっており、裏側にはピンになるギボシとベルトを通す角カンのパーツを取り付けてあります。

工夫した点として、角カンを取り付けているパーツ(根革-ねかわ)をなんとかスムーズで強く、かっこよく出来ないかと思いちょうどその時に見ていた宮大工さんの柱を斜めに差し込む方法から着想を得て土台の革を斜めに削り込んだ部分に根革を組み込んで手縫いと裏側からの補強で頑丈に留めました。

表側に来る部分は土台の牛ヌメ革に染めと磨きで立体感を出した漉模革を貼り、最後に表側部と裏側部を合体させてコバを磨き切り完成です。

出来上がり

お客様着用画像を頂きました!

以上、漉模革と木目金を使用したベルト兼ギターストラップについてでした。

ご注文頂きましたお客様、このページを最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました!

漉模革と木目金を使用したベルト兼ギターストラップ

・ヒアリング

・デザイン

・作成

・料金目安¥45,000~(+TAX) 

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