木目金とイタリア製ホースレザーのコンビネーション

「木目金(もくめがね)」とは、比重、融点、硬度の異なる金属を複数枚重ね合わせて熱で溶着した後削り出した時に浮かび上がる木目のような模様を持つ金属加工技術であり、400年前に太平の世となった江戸時代に発達し、廃刀令による刀の運命と共に失われてしまいはしたものの、現代の職人やアーティストの研究により再現されている大変美しい模様を持った日本発祥の金属工芸の一つです。

異なった性質を持つ多種多様な金属を合わせて模様を作る為、それぞれの金属に対しての多角的な知識と実際に扱う技術、出来上がりを想像しながら模様を削り出していく卓越した熟練度を要する大変デリケートな工程を踏んで完成する大変優雅な表情を持つレアメタルです。


金、銀、プラチナ、銅をベースにするのが主ですが、現代ではチタンやタンタル、ジルコニウム等を用いた木目金を作る技術も発達しており、正に温故知新を感じさせる技術です。

刀のツバに用いられた木目金

簡単にではございますが真横で見た限りでわかる範囲の工程の説明も載せておきます。

銀と銅は相性がよく四分一(しぶいち)とは日本の伝統的な銀銅合金です。
銀の融点は1084度で銅は961度ですが銀と銅が接している時、接合面の融点は750度まで下がるのでこの「共晶点」という現象を利用して銀と銅の接合部だけを溶着させて合金化を防ぐ火加減がポイントになります。
火の温度が低いと溶着が不足して剥離しやすくなり、高いと合金になって木目が出ない。更にこのパーツは全方向から剥離する力のかかる球面のデザインなのでより確実に金属同士が溶着されていることが必須となる難易度の高い技術です。

色の違いが出るように異なる金属を交互に重ねて固定し加熱。共晶点で金属同士が溶着したら叩いてブロック状の金属ミルフィーユを薄い板状にします。
その板を彫ったり削ったりしながらその高低差が無くなるまで叩きながら延ばして加工硬化作用(金属が叩くことによってどんどん締まって固くなる現象)を避けるために絶妙な温度での焼き入れを繰り返すと金属で出来た木目の板が出来上がります。

ここまでの作業でやっと材料の完成で、ここからこのデリケートな素材を使用した金具づくりがスタートします。。。

今回はドットボタンに仕上げて頂いたのでカシメる脚を球面に加工した木目金板で巻き込んで溶接し、酸化、硫化、イオン化をを防ぐ為にセラミックを焼き付けて表面を保護しました。

木目金ボタン

70歳を超えても淡々と研究し作り続ける感覚の「鋭利さ」、千以上の道具が全て手を伸ばせば取れる距離に配置された「庵」のような、静かな時間の流れる空間で黙々と作業し続ける圧倒的な姿勢に畏敬の念を込めてこのパーツを使うシリーズに「鋭利庵」-ALIEN-と名付けました。

革に関してはALIENを彷彿とさせるスムーズな質感を出すべくイタリアの伝統的な手法で長い時間をかけて鞣しながらオイルを浸透させたイタリア・サンタクローチェの馬革をベースに、内側は国産のベジタブルタンニン鞣しの牛革を用い、無駄のないディテール、木目金の際立たせ方に特に気を配って作りました。

カードポケットが9つ、お札ポケットが2つに分かれておりコンパクトながら十分な容量を持たせました。

木目金と革を最大限に際立たせる為に財布を外側と内側で分けて考え、内部構造は縫製で作り込み、使用時に力のかかるポイントのみ外側と手縫いで繋ぎ合わせてあります。

この革の素材も永く使えば使うほどタンニンとオイルの艶が増し深い表情を出すので、最初から壊れる場所を決めてそこだけを直す構造にしてメンテナンスをしながら使い続けられるようになっています。

初見の方から「カルチャーあるね!財布作ってよ!」と言われた事をきっかけに始まった今回の一点は木目金という素晴らしい日本の伝統技術とイタリアの伝統ある革の使用そして自信が今まで培ってきた三十余年の要素をフルに活用してお客様のヒアリングに対応した物になったので自分だけに留まらない新しい方向性を「古」から得られた良い機会になったと思います。

yesnosパッケージ

yesnosは伝統ある素材や技術を使用していてもどこか新しい見え方がある物作りを日々模索しているので今回使用した木目金のパーツも木目ではあるけれど「カモフラ柄」にも見えるような偶然の産物を敢えて選んだり、従来の一般的な財布の作り方から少し離れた作り方をしたりして、例えばスケートボードに乗る人が持っていても様になるけど実はとても奥深いストーリーがある。そんな一点を目指しました。

パッケージもストックしてある残革を使用してなるべく都会的なイメージになるように簡単な紙封筒がテープで閉じられている感じをイメージしてお作りしました。

ご注文ありがとうございました。

「鋭利庵」/コンパクトウォレット

・ヒアリング

・デザイン

・作成

・料金目安¥50,000~(+TAX)

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