ホーウィン/シェル・コードバンの財布

今回ご依頼頂いたのは、キャッシュレスが進んで長財布を使わなくなったのでコンパクトでお札、小銭、カードが入る財布を良い感じの革で作って欲しいとのご依頼でした。

10年程前までの長財布が主流の時代とは打って変わり、財布に求められるサイズや機能が激変したのを感じます。

各製作者が「今」に対応する為に色々な構造のコンパクトウォレットを作って発信しており、コンパクトウォレットのデザインが工業的な合理化と秀逸なデザイン性の両立を果たした最終形態に至り「絶対的な定番型」が生まれるまでもうしばらくかかるだろうなと感じています。

まだ答えのない中で試行錯誤を繰り返してお客様のご要望に細かい点まで沿いながらyesnosなりのデザインも練り込んで行くモノヅクリに作り甲斐を感じております。

ホーウィン/シェル・コードバンの裏側にある社印

良い革をご希望でしたのでちょうど何枚か持っていた米国ホーウィン社のシェル・コードバンという革を使用しました。

ホーウィン社とは、アメリカ第3の都市であるシカゴで100年以上の歴史を持つ世界的にも有名なレザー・タンナー(皮を革にする場所)です。

この会社のコードバンは長時間かけて丹念に油脂分を繊維の奥まで浸透させているためしっとりとした手触りと使えば使う程に深みを増す光沢感が特徴です。

「コードバン」について。

コードバンの名前の由来や素材の起源については諸説あり謎も多いのですが、中世イスラム期のスペイン・コルドバ地方がその名の由来との説が有力です。

コードバンは1頭の馬からA4~A3サイズが2枚取れるか取れないかの超希少部位であり牛革よりもはるかに強い強度と希少性とその美しさから

「皮革のダイヤモンド」「キング・オブ・レザー」

などと形容される皮革の頂点的な存在であります。

高い耐久性と、手入れ次第ではどんな革よりも長く美しい状態を保てることから紳士小物に使用されることの多いエレガントでフォーマルファッションとの相性も良い素材であることが古くから人々を魅了して止まない理由でもあります。

コードバンの光沢

コードバンの説明に移る前にレザーの種類について幾つか簡単にご説明したいです。

皮膚の表面(1番外側)を吟面(ぎんめん)と呼び、一般的に想像しやすい所謂レザーは吟面付きのレザーで、

ヌバックは吟面を削って毛羽立たせた革、

スウェードは吟面側を裏にし、肉と革がくっついていた部分を表にして仕上げた革、

床(とこ)とは肉と吟面の間の部分であり、普通は繊維のキメが荒く吟面付きよりも耐久性の弱い部分で、革の厚みを後から足すときのカサ増し等に使用される部分です。

が、、、

コードバンは特別で実は馬の臀部の分厚い革の内の床面の中にある2㎜程度の層のことなのです!!

あらゆる床面の中でコードバンのみが何故か綿密な繊維が綺麗に整列したキメ細かい構造を持っており、そのため丹念な磨きの工程を経るととても美しい光沢が出ます。

そして、そもそもが吟面とは違い露出した繊維層であるため多少の傷であれば磨くことによって傷をなじませて消せる事が長持ちすると言われる理由です。

「デザイン」について

コードバンの財布となるとフォーマルな物が一般的で、あまりカジュアルでデイリーに使いやすいデザインの物が無いなと思い、ストレスポイント以外のステッチを全て排除し、別で作ったカードポケットや小銭入れ等の「内部構造」は縫製で仕上げた物を、表は表で別に仕上げたコードバン1枚にハンドステッチで縫い付け、ポルシェのクラシック・カーの幌を留めるのに使用されていたドイツホックという頑丈でインパクトのある金具を使用しました。

ポルシェのクラシック・カーの幌(ほろ)留め金具:ドイツホック

こちらのオーダーを頂いたお客様はライフスタイルの面でフォーマルよりもカジュアルな場面が多く、財布はポケットには入れず鞄に入れて持ち歩くスタイルであったことから金具としてはボリュームのあるドイツホックを使用してデザイン的にもオリジナリティーを出せた点が良かったと思います。

ご注文ありがとうございました!

ホーウィン/シェル・コードバンの三つ折り財布

コンパクトウォレット

・ヒアリング

・デザイン

・作成

・料金目安¥90,000~(+TAX) 

※ホーウィン/シェル・コードバンを使用した場合の料金目安ですので異なる素材を使用した場合はお値段が変わりますのでご相談下さい。

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